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『のんのんびより』川面真也監督インタビュー「日常、ファンタジー、にゃんぱすー」(前編)(1)
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月刊「コミックアライブ」(KADOKAWA刊)にて絶賛連載中の『のんのんびより』(作・あっと)が、2013年10月からTVアニメ化され、大きな話題を呼んでいる。女の子たちのささやかな田舎生活をコミカルに描き出すいわゆる「日常系」作品である本作だが、その舞台となる「旭丘分校」は全校生徒がたったの5人しかいない。そんな一風変わったシチュエーションのもと、シュールなギャグと自然豊かな田舎町の移りゆく四季の彩りが、冴え渡った演出によって紡がれてゆく。
そんな画面の強度を支える監督の川面真也に、作品のコンセプトからその技法、今年2013年のアニメ流行語大賞で金賞を受賞した「にゃんぱすー」の秘密まで伺った。これまでにありそうでなかった、新たな日常系アニメの可能性がここから開闢する。
TVアニメ『のんのんびより』公式サイト:http://www.nonnontv.com/
TVアニメ『のんのんびより』公式Twitter:@nonnontv
プロフィール
川面真也(かわつら・しんや)
アニメーション監督、演出家。『NOIR』(2001)で演出家デビュー。ビィートレインで各話演出を数多く手がけた後、SILVER LINK.制作の『ココロコネクト』(2012)でTVシリーズ初監督を務める。他の監督作にOVAシリーズ『乙女はお姉さまに恋してる 2人のエルダー THE ANIMATION』(2012)がある。『のんのんびより』(2013)はTVシリーズ監督第2作となる。
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■にゃんぱすぱすーん
――12月2日に発表された「アニメ流行語大賞2013」(ガジェット通信)では、れんげの台詞である「にゃんぱすー」が金賞を受賞されましたね。おめでとうございます。
川面:ありがとうございます。ただ「にゃんぱすー」に対する反響の大きさには正直驚いているところがありますね。もちろん、物語の起伏が激しい作品ではないので、代わりにキャッチーさのある「にゃんぱすー」を大事にしたいとは思っていました。ただあの言葉は、独特な感性を持ったれんげが、あのときあの場所での気分から発した思い付きの挨拶でしかないので、それ以降も特にフィーチャーされる決め台詞ではなかったんですよね。原作でもそれほど使われてはいません。
――最新の第6巻までで5回だけですよね。アニメでも第9話までですとそのうちの4回に、オリジナルで1回付け加えているだけとなっています。
川面:そうですね。あまり意識していませんでした。だからこれだけ反響をいただけて、流行語大賞にまで選ばれたのは、単に言葉の響きがかわいかったからという理由が大きいのだと思います。
■可愛らしい背景、ファンタジーとしての田舎
――ところで、監督のご出身はどちらになるのでしょうか。
川面:大阪の吹田というところです。
――いわゆるニュータウン開発で生まれたベッドタウンですね。ということは、『のんのんびより』で描かれる緻密で美麗な田舎の光景というのは、あくまで「都市という外部から見た田舎」という視点に近いのでしょうか。
川面:そうですね。作中で言えば蛍のような立場で、だから風景描写の緻密さを評価していただけることもあるのですが、かといってありのままの田舎の光景を捉えるような、フォトリアルな緻密さの追求はしていないんですよ。原作者のあっと先生も、必要があるところだけを調べて、あとはご自身のイメージで描かれたとおっしゃられていて。それと同様に、アニメ版の背景も田舎そのものではなく、雰囲気を感じさせることに重点をおいています。僕と美術監督の大泉(杏奈)さんの間ではそれを「可愛さ」と呼んでいるんですけど……。
――背景美術が可愛い?
川面:はい、「可愛い風景」というのは制作陣の間での重要なキーワードですね。企画が動き出した初期の頃には、「田舎を舞台に女の子たちの日常を描く作品です」と作品コンセプトを伝えると、「では『となりのトトロ』ですね」とよく言われました。でも僕が目指したいと思っていたのは、ああした純和風でフォトリアルな田舎ではなくて、かといって記号的だったりパステル調だったりという風でもない、そことはまた別のタイプの画でした。それを探っていく中で思い付いたのが、田舎の風景を「可愛い」と感じてもらうというコンセプトだったんですよ。
©2013 あっと・株式会社KADOKAWA メディアファクトリー刊/旭丘分校管理組合
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